東京証券取引所の市場区分再編から3年経過した今の状況

(本記事は弊社事務所通信令和7年5月号に掲載された記事をWeb用に書き換えたものです)

こんにちは。パートナーの吉原です。

2022年4月に東京証券取引所(以下「東証」)が市場区分を「プライム」「スタンダード」「グロース」の3区分に再編し、それぞれに新たな上場維持基準を設定してからこの4月で3年が経ちました。

この見直しにより一部の基準が従来よりも厳格化されましたが、再編前から上場していた企業についてはいきなり新基準を適用すると上場廃止が相次ぐ恐れがあったため、2022年4月時点で上場していた企業については、一定期間「経過措置」として緩和された基準を適用してきました。経過措置の下では、例えばグロース市場であれば、流通株式数1,000単位以上が基準のところを500単位、流通株式時価総額5億円以上を要するところを2.5億円以上などという形で、本来の基準より緩やかな条件が適用されていました。

この経過措置は当初より2025年3月に終了し、2025年3月1日以降に到来する最初の基準日(通常は決算期末)からは、本来の厳格な上場維持基準が適用されることとなっていました。これ以降は、基準未達の企業は「改善期間」に入ることとなります。改善期間は原則1年間で、当該企業は、「上場維持基準への適合に向けた計画」(以下「適合計画」)を作成・開示し、実行しなくてはなりません。この改善期間内に基準に適合しない場合は、順次「監理銘柄」「整理銘柄」に指定後(原則として6か月)に上場廃止となります。

例えば3月決算企業の場合、2025年3月末が判定の基準日となり、基準日後3か月以内に適合計画を作成・開示したうえで、2026年3月末までに基準を満たさなければ監理銘柄となり、以降上場廃止のプロセスに進む形となります。なお、2023年3月31日時点で、2026年3月1日以降の基準適合を目指す計画を開示していた企業(「超過計画開示会社」)については、その計画期限における適合状況が確認されるまで監理銘柄指定が継続される特例措置も設けられています。

東証が公表している「改善期間該当銘柄等一覧」の2025年5月1日更新分によると、グロース市場に上場する企業のうち上記の改善期間に入っている企業は現状23社となっていました。
その一方で東証で設置した、エコノミスト、投資家、上場会社、学識経験者等の有識者による「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の4月22日開催分では、グロース市場の上場維持基準を、上場から「10年経過後に時価総額40億円以上」という現行基準から「5年経過後に時価総額100億円以上」に引き上げるべきことが議論されました。中小型の成⻑株に投資を行う機関投資家へのヒアリングで、高い成⻑を目指すスタートアップ企業のための市場区分であるグロース市場であるのに、長期間小規模のままの企業が多数を占めるようでは市場として魅力に欠けるという結果が出たことによるようです。上記23社を含む経過措置や改善期間に該当する企業にとっては、さらに厳しい状況になろうとしていると言えるでしょう。

※本稿は令和7年5月現在の情報で執筆しております。
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