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電子帳簿保存法の戸惑いとアレコレ

(本記事は弊社事務所通信令和3年10月号に掲載された記事をWeb用に書き換えたものです)

皆様こんにちは。パートナーの鯨岡です。10月に入り、いよいよ今年も残り3ヶ月を残すのみとなりました。
緊急事態宣言はようやく解除されることとなりましたが、年始以来の9ヶ月間、強弱あるとはいえ様々なことが制限され続けてきました。まだまだ予断を許す状況ではありませんが、さすがにそろそろ経済活動も再開させていかなければ・・・と強く思います。

さて今月は「電子帳簿保存法」について触れたいと思います。
同業者(税理士)の間でも、ここ1ヶ月ほどで急に注目度が増してきており、しかも相当の危機感を伴った話題であります。いわば「8月31日の夏休み最終日にあって、全く着手されていない自由研究」の如き存在と言っても過言ではない状況です。これがどれほど「ヤバい」状況なのか。今月はこれについて説明してみたいと思います。

法人や個人事業主には、決算や税務申告の作成基礎となる帳簿書類を一定期間にわたり「紙」で保存することが義務づけられていますが、一定の要件を満たせばこれらを「電子データ」によって保存することができます。その根拠法令となるのが「電子帳簿保存法」であります。

電子データによる保存の対象となるのは、
①帳簿
②書類
③電子取引データ
の3種類です。
このうち「帳簿」とは、会計処理の基礎となる帳簿を総称したもので、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳などが該当します。
また「書類」とは、「決算書類」(貸借対照表や損益計算書など)および「証憑書類」(請求書、領収書、契約書等)が該当します。
そして「電子取引データ」とは、取引情報(注文書、契約書、請求書、領収書等)の収受を電子的にのみ行われるデータを指し、具体的には、電子メールに添付された請求書データや、ホームページからダウンロードされた領収書データなどが該当します。

これらのうち「帳簿」と「書類」については、最初からPC等を使用して一貫して電子データで作成している場合には、改ざん防止のための所定の要件を満たしていることを条件として税務署長の承認を受けることによって、電子データのまま保存することが認められています。また、紙で受領した「書類」についても、所定の要件を満たしていることを条件として税務署長の承認を受けることによって、スキャナ保存されたデータを保存することが認められています。「電子取引データ」については、所定の要件を満たしていれば、特に事前の承認なく、電子データでの保存が認められています。

ところが、です。実際には「帳簿」の電子保存についてはある程度の適用件数があるものの、「書類」については「所定の要件」が大変厳しいことからほとんど適用されていないのが実態です。同様に「電子取引データ」についても、「所定の要件」が大変厳しいことから、電子データのまま保存するのではなく紙に出力して保存せざるを得ない状況にあります。

さて、上で「夏休み最終日の未着手の自由研究」と書きましたが、今回問題となっているのは「電子取引データ」の保存であります。具体的には、令和4年1月1日以降、「電子取引データ」については紙での保存が認められず、電子データとして保存しなければならない、というルールに変更されるのです。従来のようにデータを紙に印刷して保存しても、それは保存したことにはならない。その結果、損金として認められなかったり、消費税の仕入税額控除の適用を認められなくなるということであります。

充足しなければならない要件には「検索要件」と「タイムスタンプ要件」の2つがあります。

「検索要件」では、「その電子データについて、取引年月日、取引金額および取引先による検索ができること」が求められます。

また「タイムスタンプ要件」では、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
・タイムスタンプを付与した後にデータの収受を行うこと。
・収受後遅滞なくタイムスタンプを付与し、データ保存者又は監督者の情報を確認できること
・電子データの収受・保存について、訂正削除履歴を確認できる(若しくは訂正削除できない)システムを使用すること。
・事務処理規程(正当な理由のない訂正削除の防止に関する事務処理の規程)を定め、備付け・運用をすること

さらに、この「タイムスタンプ」は何でもいいというわけではなく、JIIMA(一般財団法人日本データ通信協会)が認定したものでなければなりません(利用にはある程度のコストがかかってしまいます)。

この改正は令和3年度の税制改正によるもので、具体的なガイダンスが公表されたのは令和3年7月です。ある程度準備に時間のかかりそうなことを要求されている割には全く周知されておらず、しかもタイムリミットは今年の年末です。どうにか経過措置あるいは弾力的な運用の方針が示されないかと願うばかりですが、まずは具体的な対応について、弊社も全社体制で検討していかなければなりません。

※本稿は令和3年9月30日現在の情報で執筆しております。
※記載されている内容は執筆時点で判明している法律・通達等に基づいて記載をしておりますが、その時点並びにそれ以降における正確性を保証するものではありません。また、一般的な事例を記載しておりますが、特定の個人や組織がおかれている状況に対応するものではありません。本稿を参考に何らかの行動を執られる場合には、税理士をはじめとする専門家にご相談の上ご判断ください。

※本コラムの著作権は弊社並びに筆者が保有しております。無断転載複写については固くお断りさせて頂きます。一部引用については適切な措置をお願い致します。

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