相続と遺言と遺産分割のはなし

(本記事は弊社事務所通信令和4年3月号に掲載された記事をWeb用に書き換えたものです)

3月になりました。花粉が増えてきたので、くしゃみや鼻水で「コロナ?」と周りに嫌われないように今年は早めにアレルギーの薬を準備しました。皆さまはお変わりありませんか。

さて、私事ですが、2月に実家の父が亡くなりまして、先月はバタバタしておりました。相続税の申告は色々経験させていただいておりましたが、実際、喪主当人になるというのははじめてで、葬儀社の方とネットの力をお借りしてどうにかこうにかといった次第です。コロナのおかげで「今はほとんどが家族葬ですから」という簡略化が普通という状況で本当によかったと思いました。とはいえ、まだ全部片付いたわけではないので、しばらくは落ち着かない日が続きそうです。

そんなことで、今回はちょっと相続のお話でもしようかと思います。

相続でよく耳にする「遺産分割協議書」というものがあります。これは読んで字のごとく「遺産をどのように相続人たちに分配するかを協議して合意した文書」です。これをもって、金融機関などで財産の名義変更の手続きをすることになります。相続人が一人しかいない場合には当然必要ありませんし、被相続人の方が「遺言状」を残されていれば、それがまず当人の遺志として尊重されます。

今は「事実婚」や「同性のパートナー」といったことも珍しいことではなくなっております。そういったパートナーについては、相続となると日本はまだ戸籍上の権利しか対象になりませんので、「法定相続人」としての権利がないため、「遺産分割協議」のテーブルにはつけず、添遂げた人に「当然の権利として残す」ことができないことになります。実際に、「相続税」「贈与税」を経由して、手元に届く残りの金額が小さくなってしまう事例もありました。きちんとした「遺言状」があれば問題ないのですが、なかなか準備されている方は少ないようです。

「遺言状」は、主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」に分かれます。信頼度があるのは「公正証書遺言」で、これは公証人を介して作成保管されるものになりますので、反面、手軽なものではないため一般的には垣根が高いのがデメリットです。

一方、「自筆証書遺言」は15歳以上で文書を直筆で残すことができれば、いつでも手軽に作成できます。(もちろん、内容に誤りがあると無効になりますので法令上の要件を満たす必要がありますが。)デメリットとしては、その原本を自身で管理する必要があることと、遺言者本人の相続発生時には家庭裁判所での検認が必要でした。これについては、令和2年7月10日から「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行され、ご自分で作成した遺言書を法務局で保管してもらえるようになりました。これを利用すると家庭裁判所での検認も不要になります。

最近では「終活」という言葉があります。高齢化が進む中、自分はまだまだと思わずに、残された人たちが困ったりすることのないよう、身の回りをどうするか考えておくことはとても大切なことだと思います。わが身に置き換えてしみじみしております。では今回はこの辺で。

※本稿は令和4年3月1日現在の情報で執筆しております。
※記載されている内容は執筆時点で判明している法律・通達等に基づいて記載をしておりますが、その時点並びにそれ以降における正確性を保証するものではありません。また、一般的な事例を記載しておりますが、特定の個人や組織がおかれている状況に対応するものではありません。本稿を参考に何らかの行動を執られる場合には、税理士をはじめとする専門家にご相談の上ご判断ください

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