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「収益認識に関する会計基準」のその後の話。

(本記事は弊社事務所通信平成30年5月号に掲載された記事をWeb用に書き換えたものです)

皆様こんにちは。パートナーの鯨岡です。
新緑のまぶしい季節がやってきましたね。相変わらず、なかなか季節を感じる余裕がない状況ですが、それでも毎年恒例の出張シーズン。行く先々の風景を少しは楽しんでおります。今シーズンは神戸 ⇒ 名古屋(知多) ⇒ 神戸 ⇒ 広島 ⇒ 小倉と、出張ロードはもう少し続きます。がんばります。

さて今月のファシオ通信ですが、「収益認識に関する会計基準」のその後の話について書いてみようと思います。

「収益認識」とは「売上高を会計上の取引として計上すること」を意味する会計用語ですが、特に「いつ」計上するか(収益認識時期の確定)という点は会計上も税務上も重要な問題とされます。売上高は損益計算書の最上段に記載される金額であり、会計上の利益や税務上の利益(課税所得)の算定に当たって最も基礎となる金額だからです。

この点に関し、従来は特に細かな会計基準というものがなかったのですが、永らくの議論の末ようやく、平成30年3月30日付けで『収益認識に関する会計基準』が企業会計基準委員会より公表されました。

この会計基準は、国際的に採用されている会計基準(IFRS:国際財務報告基準)の規定とおおむね整合するように策定されており、この基準に従って収益を認識することによって、いわば「同じ土俵」で決算数値をグローバルで比較できるようになるという効果が期待されています。

収益を認識するためには以下の5つのステップを踏まなければならないとされています。

顧客との契約を識別する
⇒ 契約に含まれる「履行義務」(財・サービス等を提供すること)を識別する
⇒ 取引価格を算定する
⇒ 取引価格を履行義務に配分する
⇒ 履行義務を果たした部分について、配分された取引価格を収益として認識する

まあこのような難しい話はさておき、売上を計上するために随分と複雑なプロセスを経るものだな・・・と感じて頂ければ十分なのですが、この基準が強制適用される上場企業などでは、現在適用している売上の計上基準が妥当かどうか、上記のプロセスに即して再検証している状況にあります。場合によっては、売上高として計上すべき金額が従来の何十分の一になってしまう可能性もあるのです(卸売業のように、商品の取次をするだけの業種の場合、販売手数料だけ売上高とすべしという考え方もあるためです)。

このような会計基準が策定されたことに伴い、法人税の規定も改められました。実はこれまで、法人税の計算ルールの中に収益認識に関する規定がなく、会計上の取扱いを原則としてそのまま認めていたのですが、会計基準が複雑化したことに伴い、税務もこれを無条件に認めてしまうと適切な所得計算を阻害するおそれがあるためです。

平成29年度の税制改正によって、法人税の課税所得を計算するに当たって、原則として、「目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度」において収益を認識することが明確化されました(法人税法第22条の2第1項)。また、収益の額をいくらとするかについては「目的物の引渡し時の価格、又は提供したサービスについて通常得られる対価」による、とされました(同4項)。会計基準に定めるように、履行義務を識別して・・・取引対価を配分して・・・という作業は無視です。要するに「今まで通り」。今までは明文化されていなかった取扱いが明確化されたということです。

ただ一つ、従来特別に認められていた「長期割賦販売の特例」(一定の要件を満たしている割賦販売について、入金時に収益を認識するルール)がリース業を営む法人に限定されることとなりましたので、入金時に売上高を計上していた業種にあっては売上高の計上タイミングが大きく変わることとなります(販売時に全額を収益計上することに)。これは税務の取扱いの改正ですので、中小企業であっても影響を受ける可能性があります。

「売上高をいつ、いくらで計上するか」という会計上の重要な問題がようやくひとヤマ超えたなという話でした。小難しくなりましたが、たまにはご容赦を。

※本稿は平成30年4月30日現在の情報で執筆しております。
※記載されている内容は執筆時点で判明している法律・通達等に基づいて記載をしておりますが、その時点並びにそれ以降における正確性を保証するものではありません。また、一般的な事例を記載しておりますが、特定の個人や組織がおかれている状況に対応するものではありません。本稿を参考に何らかの行動を執られる場合には、税理士をはじめとする専門家にご相談の上ご判断ください。

※本コラムの著作権は弊社並びに筆者が保有しております。無断転載複写については固くお断りさせて頂きます。一部引用については適切な措置をお願い致します。

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