NFT(非代替性トークン)の売買で生じた利益は税務上、どの所得になるのかを考える

2021年の暗号資産(仮想通貨)相場は、ずいぶんと熱狂しあがったものの、ここ最近は落ち着いてきた感があります。
そして、今また暗号資産界隈で熱を帯びているのが「NFT」(Non-Fungible Token:非代替性トークン)ではないでしょうか。

NFTは、「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」と言われるように、1点ものの証明が与えられた、デジタル資産というところ。
実際に取引されているものは、デジタルアート作品や、アイドルやプロスポーツ選手のトレーディングカード(トレカ)、オンラインゲームのアイテムなんてものがあります。事例は他であたってもらうとして、本稿ではこれらを売買した場合の税務について考えてみます。(2021.12.5追記)

下記については、執筆時点で判明している法律・通達等に基づいて記載をしておりますが、その時点並びにそれ以降における正確性を保証するものではありません。また、一般的な事例を記載しておりますが、特定の個人や組織がおかれている状況に対応するものではありません。後日、国税庁より異なる見解が示される場合もございます。本稿を参考に何らかの行動を執られる場合には、税理士をはじめとする専門家にご相談の上ご判断ください。当社・筆者は一切の責任を負いかねます。

NFTは暗号資産であるのか

皆さんご存じの通り、暗号資産の売買により生じた利益(所得)は【雑所得】ですね。この場合、所得税では総合課税という扱いになります。
では、NFTも暗号資産だから雑所得じゃないの?・・・となるのですが、ここにひとつポイントがあります。
では、暗号資産の法律上の定義を確認してみましょう。日本では、法律上、資金決済法に下記の通り記載があります。税理士以外のかたはカッコを飛ばしてください。

資金決済法2条5項
この法律において「暗号資産」とは,次に掲げるものをいう。
一 物品を購入し,若しくは借り受け,又は役務の提供を受ける場合に,これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ,かつ,不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り,本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ)であって,電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって,電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

いかがでしょうか。赤字は筆者がつけましたが、1点ものであるNFTはこの暗号資産にあたらないのではないでしょうか。あくまでも、あるデジタル資産の所有者である証明書、というような内容ですので、不特定の者に対して使用することはできません。なんせ1点ものですから。
となると、「NFTの売買により生じた利益は、【暗号資産の売買であるから】雑所得である」という見解には疑問を持たざるを得ません。
では何所得にあたるのかを考えるに・・・筆者は【譲渡所得】に該当する可能性があると考えています。

譲渡所得とは

譲渡所得については、所得税法33条に以下の通り規定されています。税理士以外の方は条文を読み飛ばしてください。

所得税法33条
譲渡所得とは、資産の譲渡(中略)による所得をいう。
2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得

暗号資産については、たな卸資産に準じた取り扱いをされており、「その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡」にあたることから、譲渡所得にはあたらないことになっています。
しかし、上記の通り、NFTは資金決済法の暗号資産にあたらないこと、そもそもNFTの売買は、継続的に行われる資産の譲渡に該当しない方のほうが多いのではないでしょうか。あわせて、譲渡所得は資産の譲渡による所得を指しており、それが実体資産であるのか、デジタル資産であるのかの区別はしていません。
もともと、1点ものの資産を取得し、どこかで売却しただけ、かつ、継続的に行っているわけではないのであれば、譲渡所得にあたる可能性がある、というように考えられるのではないでしょうか。
このあたりは、現物資産である金地金の売買を行った場合の取り扱いが参考になると思います(あくまでも税務上の計算の話だけです、金地金はFungible(非代替性)ではないので)。
国税庁タックスアンサー「No.3161 金地金を売ったときの税金」
金地金も、頻繁に売買していなければ、雑所得ではなく譲渡所得になるとされています。そして、ご存じの通り、長期譲渡所得の場合は、その所得の半分を総合課税するため、税制上は優遇されていることになります(国税庁タックスアンサー 「No.1460 譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)」)

とはいえ、この判断はとても難しいところですね。そもそもNFTという概念が新しいものですので、暗号資産の定義が変われば、上記の見解も変化する点、ご留意くださいね。
(2021.12.5追記)
上記の通り、譲渡所得になる可能性があるのですが、令和3年12月段階で当局から明確な指針は示されていません。
そこで、実務上は、「雑所得」として取り扱うことが保守的な取り扱いとなりますので、今回の確定申告では雑所得とすることがよいのではないかと思います。

NFTを取得する際に支払った暗号資産(仮想通貨)について

ちなみに、NFTを取得する際には、たいていは暗号資産、それもイーサリアム(ETH)で対価を支払うことが多いと思います。
この際、支払った暗号資産は売却したのと同じことになりますので、ここは雑所得となります。
上記見解はあくまでもNFTの売却時に利益(所得)が生じた場合の話ですので混同しないようにお願いしますね。

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※本稿は令和3年7月1日現在の情報で執筆しております。
※記載されている内容は執筆時点で判明している法律・通達等に基づいて記載をしておりますが、その時点並びにそれ以降における正確性を保証するものではありません。また、一般的な事例を記載しておりますが、特定の個人や組織がおかれている状況に対応するものではありません。本稿を参考に何らかの行動を執られる場合には、税理士をはじめとする専門家にご相談の上ご判断ください

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