金地金の消費税と密輸の話。
(本記事は弊社事務所通信平成29年6月号に掲載された記事をWeb用に書き換えたものです)
最近新聞記事などで金塊の密輸事件についてよく目にします。いろいろと事件が重なっているだけなのかもしれませんが、それにしてもここ2~3ヶ月でニュースになる機会が増えたなあと実感している次第です。
実はこの金塊の密輸は、日本の消費税制度の特徴を悪用した行為でして、以前から問題視されているものです。
現在、わが国では金(きん)の取引は消費税の課税対象となっています(本稿では、金の読み方について、「かね」と「きん」を区別するため、フリガナを付しています)。
そのため、国内で金(きん)を買えば消費税が上乗せされて代金を支払うこととなりますし、国内で金(きん)を売れば消費税を上乗せして代金を受領することとなります。また国外から金塊を輸入する場合も、税関で消費税相当額を支払うこととなります。
ところが、諸外国では金(きん)の購入に消費税がかからない場所も多いのです。そのため、消費税のかからない国で金(きん)を買い付け、これを税関に申告せずにこっそりと日本に持ち込み(=密輸!)、これを日本国内で売却すれば消費税8%分だけ不当に利益を得ることとなってしまうのです。これは違法(関税法違反:無許可輸入)ですから絶対にやってはいけません。
もちろん対策もされています。金塊(インゴット)には刻印が施されており、これをみれば、純度、販売元、カラーその他の製品情報が一目で分かります。きちんとした業者であれば、刻印のない金塊は取り扱わない等の対応をとっているでしょう。また税務署も情報収集体制を強化しており、売買代金が200万円以上の取引を行った業者は、税務署に対して支払調書を提出することとされています(所得税法第225条第1項第14号)。
とはいえ、密輸を未然に防ぐことには限界があります。そろそろ、金(きん)の取引は消費税の課税対象外(あるいは非課税)とするような税制改正が行われるかもしれませんね。社会的関心の向上、課税上の弊害防止の必要性の高まりは税制改正を後押しする有力な要因です。
ちなみに、ビットコインをはじめとした仮想通貨に関する取引は消費税が非課税となります(平成29年7月1日以降)。支払手段となり得る金(きん)も、同じような方向性に向かうのではないか・・・と思ったりするわけですが、そもそも私自身は金(きん)を持っていませんので関係ないといえば関係ない話ですが(笑)。
※本稿は平成29年6月1日現在の情報で執筆しております。
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