(本記事は弊社事務所通信平成29年11月号に掲載された記事をWeb用に書き換えたものです)

皆様こんにちは。パートナーの鯨岡です。

昨年のドラフト会議において、注目の清宮選手について北海道日本ハムファイターズが交渉権を獲得したのは記憶に新しいところです。いざ入団となりますと「契約金」が球団から支払われることとなります。選手によっては億単位の契約金が支払われることもあり、球団経営上もそれなりの支出になるわけです。

この「契約金」ですが、税務上は「繰延(くりのべ)資産」というものに該当し、契約期間にわたって償却(費用計上)処理することとされています(法人税基本通達8-1-12)。契約期間が不明な場合は3年で償却することとされておりますので、契約金1億円を支出したとしても、それが全額その期の損金に算入されるわけではなく、最長3年間にわたり分割して償却費として損金の額に算入されることとなります(年間33,333,333円ずつですね)。

上記の「法人税基本通達」とは、法人税法の解釈について上級行政機関(国税庁)から下級行政機関(税務署)に対して統一の運用を求めるための「指針」であり、拘束力のある「法源」ではありませんので、裁判所も「通達」に基づく判断は行いません。

しかし、税務署がこうした「通達」に沿った課税処分をすることが求められることから、納税者に対しても事実上「法律」と同じような拘束力を持つと考えられています。もっとも「法律」ではありませんから、通達の内容に疑義がある場合には納税者として争うこともできますし、少なからず、通達による課税処分が取り消されるケースもあります。

ちなみにプロ野球球団に関しては、「法人税関係の個別通達」として、【職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱いについて】というものも発遣されています。職業野球団というのはプロ野球球団のことですが、ずいぶんと古くさい呼び方だなと・・・。よくよく見ると、この通達が発遣されたのは昭和29年8月10日。実に60年以上前の話です。これがまだ生きているのですから驚きです。

ここで何を規定しているかといいますと、プロ野球球団を子会社として保有する親会社(当時は映画会社、新聞社、鉄道会社でした)が、その球団子会社に対して支出した広告宣伝費等について損金算入することを認めたものなのですが、詳細に見ると納税者にとって破格の待遇となっていることが分かります。すなわち、

  • 親会社が球団子会社に対して支出した金額のうち、広告宣伝費と認められるものは親会社にて損金算入できる
  • 親会社が球団子会社の欠損金(赤字)を補填するために支出した金銭は、その欠損金を限度として、親会社にて損金算入できる
  • 親会社が、球団子会社に対して支出した金銭を貸付金として処理している場合であっても、それが赤字補填のためのものである場合には、親会社にて損金算入できる

というものです!子会社の赤字補填を費用処理しようが貸付金処理しようが、親会社側で損金算入できるという有り難い通達ですね。

もちろんこれは、球団子会社に対するものに限定されていますので、一般事業会社で同様の支出を行っても寄附金として損金不算入とされるので注意が必要です。

およそ税金は法律の定めに従い公平に取り扱われるべきものであり、これは憲法上の要請でもあります(租税法律主義)。しかしながら、特定業種についてこうした通達に基づき特別扱いがなされているという現実もあります。一定の政策目的のために減税などの租税特別措置法を定めること自体、憲法14条1項の平等原則に反するのではないかとの議論もあるなかで、法律でもない通達にのみ基づく明らかな「特別扱い」が現に存在しているという事実。何となく釈然としない思いはあります。

※本稿は平成29年11月1日現在の情報で執筆しております。
※記載されている内容は執筆時点で判明している法律・通達等に基づいて記載をしておりますが、その時点並びにそれ以降における正確性を保証するものではありません。また、一般的な事例を記載しておりますが、特定の個人や組織がおかれている状況に対応するものではありません。本稿を参考に何らかの行動を執られる場合には、税理士をはじめとする専門家にご相談の上ご判断ください。

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